IT導入補助金活用
営業だけでなく、制作管理まで一新。
デザイン会社がZoho CRM Plus と進める実践型DX

エクセルベースの顧客管理では限界がある――そんな実感から、株式会社アートボードが選んだのは、IT導入補助金を活用した Zoho CRM Plus の導入でした。

グラフィックやWeb、映像など多様な広告制作を手がける同社では、案件情報を起点に、営業進捗の管理から見込み客へのナーチャリング、プロジェクト単位の工数把握までを一元化。少人数チームでも運用できる仕組みを自ら構築し、継続的な受注と業務改善の両立を図っています。

今回は、同社代表取締役・泉龍太郎氏と、導入パートナーである株式会社ジーニアスウェブ・小園浩之氏に、補助金活用の経緯やCRM運用の実際、そしてその先に描く“デザイン経営”の展望を伺いました。

「顧客へ送ったメールや見積もりのリマインドをはじめ、つい後回しにしてしまう業務ってありますよね? Zoho CRM Plus はそうしたタスクを自動で行ってくれるのがすばらしいと感じています」

株式会社アートボード 代表取締役
泉龍太郎氏

――はじめに、株式会社アートボードについて教えてください。

泉氏:当社は2014年に設立し、東京・渋谷を拠点に活動する少数精鋭のデザイン制作会社です。会社案内や統合報告書といったグラフィック制作をはじめ、ECサイトやコーポレートサイト、採用サイトなどのWebデザイン、さらには映像制作やスチール撮影まで、広告表現を軸とした多様なクリエイティブ業務を展開しています。
「グラフィックデザインという枠を超えて、さまざまな手段で“解決”を生み出す」。それが当社の掲げるスタンス。クライアントやマーケットの声にしっかりと耳を傾け、時には自らの視点から意見を述べ、ともに課題に向き合っていく。指示通りに仕上げる“作業”としてのデザインではなく、本質的な価値や魅力を見極め、それを丁寧に表現することを大切にしています。
目指すのは、「心を動かす」デザイン。広告という枠にとらわれず、社会やビジネスの中で本当に機能するクリエイティブを、真摯に追求しています。

感じていたエクセルによる顧客情報管理の限界。IT導入補助金がZoho 導入の契機に

――今回、貴社が Zoho CRM Plus を導入された背景、業務課題を教えてください。

泉氏:はい。もともと当社では顧客情報をエクセルで管理しており、複数名が同じファイルを開いて入力していました。ところがその運用では、うっかり情報が上書きされたり、誤って削除されてしまったりするトラブルが頻発していたんです。こうした属人化の問題もあり、正確な履歴が残らないことにも課題を感じていました。
そうした中、ちょうど経済産業省が「2025年の崖」としてDX推進を呼びかけていた時期と重なり、当社でも「より効率的で安定した情報管理の仕組みが必要だ」という機運が高まりました。また、コロナ禍によってリモートワークが常態化し、各メンバーの進捗や案件の状況を可視化できる環境が求められたことも、CRM導入を後押しする大きな要因となりました。

小園氏:初回のミーティングで、泉さんから実際のエクセルリストを見せていただいたのをよく覚えています。展示会や業界名簿をもとに膨大な見込み顧客リストを整備されていて、すでに営業のベースはしっかり構築されている印象でした。ただ、やはり履歴の蓄積や評価、情報の精度といった面ではエクセル管理の限界がありました。将来的なリピート営業やナーチャリングを見据えると、CRMの導入は自然な流れだったと思います。

――数あるSFA/CRM製品の中から Zoho CRM Plus を選ばれた決め手は何ですか?

泉氏:導入を検討する段階では、他の製品もいくつか比較しました。たとえばセールスフォースなども候補に挙がりましたが、やはりコスト面がネックになりました。その点、Zoho CRM Plus は多機能でありながらコストパフォーマンスに優れており、当社のような中小企業でも導入しやすいとと感じました。

また、Zohoさんとは以前からお付き合いがあり、ManageEngine事業部の採用サイトなどを弊社で制作させていただいたこともありました。その際に何度かオフィスを訪問し、インタビューや撮影を通じて社風や考え方に触れる機会もありました。そうした実際のやり取りを通じて信頼感を持てたことも、最終的にZoho CRM Plus を選んだ大きな理由のひとつです。

――ここからは実際にお使いになられている Zoho CRM Plus の画面を見ながらお話をお聞

かせください。日々、どのような情報をチェックされていますか?
泉氏:私が日々確認しているのは、主に売上や外注費、営業利益といった経営数値です。たとえば「今月の売上」や「外注費」がひと目でわかるようにダッシュボードを構成しており、業績をリあルタイムで把握できるようにしています。展示会の成果なども含めて、数字として記録・分析することで、今後の戦略に生かせるようにしています。
また、売上の推移も、昨年12月から直近6か月分を並べて表示させることで、季節変動や業績の流れを俯瞰できるようにしています。言わば“経営者のためのビュー”として、この画面を毎日チェックしている形ですね。

――社員の皆さんも同様の画面をご覧になっているのでしょうか?

泉氏:いえ、社員は「商談」タブを中心に、より現場に即した形で活用しています。「提案中」「ペンディング中」の案件がどれか、あるいは「見積もりが今どこまで進んでいるか」「今月の受注状況はどうか」といった情報を、それぞれが入力・更新しながら日々管理しています。商談に紐づく「取引先」や「連絡先」も併せて参照することで、チーム内の情報共有も格段にスムーズになりました。

――見込み客やキャンペーン機能も活用されていらっしゃいますね。

泉氏:はい、見込み客管理もよく使っています。たとえば特定の販促施策ごとにタグを付けて、スコアリングとあわせて成果を確認するようにしています。サブスクの案内や広告メニューの案内などを打ったタイミングごとに整理して、「このキャンペーンは4回目の配信だったな」とか、そうした履歴を追いながら運用しています。キャンペーンごとの効果を可視化できる点もZoho CRM Plus の強みだと感じています。
実を申せば、Zoho CRM Plus を導入する前は「インサイドセールス」という言葉自体、知りませんでした。しかし、今ではZoho CRM Plus の活用を通じて、その考え方や仕組みも理解できるように。営業活動の視野も広がったと感じています。

キャンペーンの配信履歴をタグで一元管理。配信タイミングや施策別に見込み客を整理することで、アプローチの抜け漏れを防ぎ、効果検証もスムーズに行える。

――実際、Zoho CRM Plus 導入後、営業スタイルにも変化があったとのことですが。

泉氏:大きく変わったのは、見込み客へのアプローチの仕方です。以前は、展示会に出展して名刺を集め、そこから営業につなげるという手法がメインで、いわゆるナーチャリング的な取り組みは一切行っていませんでした。ところがZoho CRM Plus を導入し、顧客管理の仕組みが整ってくると、「せっかくリストがあるのだから、定期的にアプローチをしていこう」と考えるようになったんです。
そこから、小園さんのアドバイスも受けてコンテンツマーケティングを始めました。たとえば、「ホームページをリニューアルする際に気をつけるべきこと」や「発注前に知っておくべき基礎知識」など、お客さまの立場で役立つ情報をまとめて記事にし、目次付きのメールでご案内する。詳細は自社サイトのリンク先で読んでいただく形にしています。もちろん、業務が立て込むとコンテンツ制作が滞ることもありますが、少しずつでも継続することで、「忘れられない存在になる」ことを目指しています。
Zoho CRM Plus を活用したナーチャリングにより、「またお願いしようかな」と思ってくださるお客様が確実に増えてきた実感があります。やはり“想起される”ことが、受注につながる第一歩なのだと、あらためて感じています。

デザイン制作の進行管理から予実の可視化まで。Zoho CRM Plus で業務効率化を促進

――デザイン業においては、とりわけ制作進行や工数管理が重要になってくるかと思います。貴社ならではの活用はいかがでしょう?

泉氏:そうですね。当社では、商談が成立した時点でZoho CRM Plus から直接プロジェクトを立ち上げ、制作進行や工数の管理にZoho CRM Plus のプロジェクト(管理機能)を活用しています。特に重宝しているのは、「誰がどの業務にどれだけの時間をかけたか?」が可視化できる点です。
たとえば、あるグラフィック制作の納品まで36時間かかったと記録されていれば、次回以降の見積もり精度を高めたり、リソース配分の参考にしたりすることができます。さらに、毎月の社内ミーティングではこの工数データをもとに、「もう少し効率化できたかもしれないね」といった振り返りを社員と共有し、業務改善に役立てています。
新たなプロジェクトの立ち上げは、CRM の商談画面から「新しいプロジェクト」をクリックするだけ。予算やタスクの設定にも対応しており、現在は正社員メンバーを中心に運用しています。実働ベースで予実を捉えるこの仕組みは、チーム全体の生産性向上や働き方の最適化にもつながっていると感じています。

プロジェクトの「工数表」画面。プロジェクトごと、メンバーごとの作業時間を日単位で可視化し、各案件にかかった実工数を細かく把握している。

各プロジェクトに紐づくタスクを一覧で管理。作業内容や担当者、ステータス、工数が明確に記録され、進捗と負荷の見える化に役立っている。

――上手に活用されているご様子ですが、何かZoho CRM Plus を使いこなすコツや知見などあれば教えてください。

泉氏:私自身、プログラミングができるわけでもなく、最初は手探り状態でした。でも、社内で「やっぱり予実管理をしっかりやろう」という話になったとき、プロジェクト管理機能であれば上手くできそうだと気づいたんです。そこからはもう「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤を重ねていくうちに、「あ、これでいけるかも」という感覚がつかめてきました。

小園氏:あの頃の泉さん、めちゃくちゃいろいろなことを試されてましたよね(笑)。「僕らより使い込んでるんじゃないか?」って思ったくらいでした(笑)

泉氏:そうですね(笑) よく「設定をいじるとデータが壊れるんじゃないか?」と心配される声も聞きますが、私の経験では、大事な顧客データが消えたり壊れたりしたことは一度もありません。多少見た目のレイアウトを変えたり、アナリティクスの一部をうっかり消してしまったことはありますけど、それも自分の作ったものなので、そこまで深刻ではなかったですね。

小園氏:CRMって売上とか顧客とか、けっこう大事データが入ってるから皆さん慎重になるんですけど、思っているよりも堅牢というか、ちょっとやそっとでは壊れないんですよね。

泉氏:はい。だからこそ、まずは恐れずにいろいろ試してみることが大事だと思います。触ってみてわかることも多いですし、「こういうことができるんだ」って発見もありますから。Zoho CRM Plusは多機能なので、少しずつ試していくことで、自社なりの使い方が見えてくると思います。

キャンペーンを活用したナーチャリングを実現することで売上はZoho導入前の倍に

――Zoho CRM Plus の総合的な導入効果についてはどのように感じていますか?

泉氏:まず大きな成果として感じているのは、「会社の現在地」が見えるようになったことです。経営の数値や案件の進捗状況がダッシュボード上でリアルタイムに把握できるようになり、感覚に頼るのではなく、数値に基づいた判断ができるようになりました。
また、各案件の進行管理も格段に精度が上がりました。以前は展示会などで名刺交換した方に一度だけメールを送って終わり…ということも多かったのですが、Zoho CRM Plus を導入してからは、キャンペーン機能を活用してナーチャリングを継続的に行えるようになり、受注に至るケースが確実に増えました。売上も体感としては倍近くに伸びており、導入前後で受注の広がりには明らかな差を感じています。

さらに、小園さんに教えていただいた見積もりの自動送信も、非常に効果的でした。以前は作成して終わりだった見積書が、今ではオートメーション設定により、一定期間後に自動でフォローメールを送るようになっています。「あのときの件はいかがですか?」と自然にリマインドできることで取りこぼしが減り、より多くの商談を前向きに進められるようになりました。
正直、自分でこの一連のフォローを毎回やるのは手間ですし、「今日はいいや…」となりがちな作業なですよね。そこをZoho CRM Plus が自動で担ってくれるというのは非常にありがたいポイントです。受注率の向上、業務の効率化、経営判断の精度向上――こうした多面的な効果を実感しています。

――最後に、導入パートナーの株式会社ジーニアスウェブへの評価をお聞かせください。

泉氏:IT導入補助金を使ってZoho CRM Plus を導入しようと決め、最初の設計段階から伴走いただき、CRMの土台をつくってくれたのがジーニアスウェブさんでした。
特に担当の小園さんには本当にいろいろ教えていただきました。しかも、かなりの部分を無償でサポートしていただいたこともあって、「そんなに無料で教えてくれて大丈夫ですか?」と、こちらが心配になるくらい(笑)。そのくらい親身に寄り添ってくれるパートナーです。
今では当社でもかなりZoho CRM Plus を使いこなせるようになりましたが、その基盤があるのは、小園さんのおかげです。何より、CRMを使って業務課題を一つずつ解決し、成果につながっていくプロセス自体が面白くて。将来的には、自分たちもZohoのパートナー的な立場でなにかお手伝いできるようになれたらという思いも、少しずつ芽生えてきています。

株式会社アートボード

  • 所在地:東京都渋谷区渋谷1-23-21
  • 業種:広告・デザイン制作
  • 社員数:6名(2025年6月時点)
  • ビジネス:B2B
  • 事業内容:グラフィックデザイン、Webサイト制作、映像制作、採用ブランディングほか
  • 設立:2014年12月
  • URL :https://artboard.co.jp/

導入支援パートナーについて

株式会社ジーニアスウェブ

マーケティングと営業活動をつなぐ役割として、Zoho CRM を中心とした各種アプリケーションの導入支援を積極的に行い、導入企業様の新規顧客獲得とリピーター獲得における強固なビジネス基盤をご提供致します。

  • 本社所在地:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1-1-3 大阪駅前第3ビル22階
  • 設立:2006年4月
  • 従業員数:29名
  • 業種:ITサービス
  • パートナー認定:認定パートナー
  • ビデオ会議対応:
  • 対応地域:全国
  • 対応サービス:全サービス
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