CRM/SFA 導入事例超人材難に立ち向かう、歯科医療界の新たな一手。
永孝会が描く“キャリア連携DX”の未来図
- 医療法人永孝会
- 所在地山口県下関市伊倉新町3-1-1 ゆめシティ2
- 業種医療・福祉(歯科診療・保育事業)
- 社員数65名
- ビジネスBtoC
- 創業2009年12月
日本の高齢化が進むなか、歯科衛生士の人材不足が医療現場に深刻な影響を与えています。そうした課題に真正面から向き合い、自ら育成の場を立ち上げたのが、山口県下関市を拠点に全国で歯科医院を展開する医療法人永孝会です。
同法人では2025年4月に歯科衛生士の養成校「山口宇部歯科衛生士専門学校」を開校。それにあわせて、学生の入学から卒業、さらに就職後のキャリア支援までを一貫して伴走するツールとしてZoho CRM を導入しました。
開校準備の初期段階からCRMを基盤に設計された同校では、成績・出欠・各種申請・履修管理といった学務業務のほぼすべてを Zoho CRM 上で一元管理。現場の負荷を最小化しながら、将来のDXモデルとして他校との共有も視野に入れた運用が進められています。
今回は、同法人の理事長・八丁 裕次氏と、向井 一真氏に、プロジェクトの全貌と展望を伺いました。
「Zoho CRM を活用することで、通常の学校運営における学生管理業務の手間は体感的に50%以上削減できていると感じています」
理事長/歯科医師 八丁裕次氏医療法人永孝会
― はじめに、医療法人永孝会について教えてください。
八丁氏:はい、当法人は、山口県下関市を本拠に、全国12か所で「オレンジ歯科」の名称で歯科医院を展開してます。開設当初から「働くスタッフが長く安心してキャリアを築ける環境づくり」を重視しており、その一環として、企業内保育所「ピーチ・ツリー」や、発達障害のあるお子さんをお預かりする多機能型施設「ミックスベリー」など、医療福祉にまたがるさまざまな事業を広げてきました。
現在は、歯科医院12施設に加え、保育園2施設、児童通所支援施設1施設を運営。そこに2025年4月開校の「山口宇部新歯科衛生士養成学校」が加わり、全16施設体制となります。
歯科衛生士の専門学校についても、元をたどれば「働く仲間を自分たちの手で育てたい」という想いが原点です。医療法人としての使命だけでなく、地域社会への貢献も意識しながら、教育・福祉・医療の三位一体となった事業展開を進めています。

危機に瀕する歯科医療の“担い手”を、当事者である自分たちの手で育てるために
― 歯科医院を経営する貴院が、新たに歯科衛生士養成学校を開校されたのはなぜでしょう?
八丁氏:いちばん大きな理由は、歯科衛生士が全国的に圧倒的に不足しているという現実です。現在、歯科衛生士の有効求人倍率は「23.3倍」といわれており、必要としている現場に対して、まったく人材が追いついていません。
しかも今後、少子高齢化の加速にともない、既存の歯科衛生士養成校も縮小や閉校が進む可能性が高く、状況はさらに厳しくなると見込んでいます。加えて、歯科助手も同様に人材不足が深刻化しており、歯科医師一人が受付から治療までを担う、いわゆる“ワンオペ歯科”が話題になるほどです。
歯科医院の総数も、2010年代のピーク時には6万9,000軒ありましたが、今では6万7,000軒に減少。経営する歯科医師のうち、実に3割以上が65歳以上という高齢化も進んでいます。例えば、私が最近視察に訪れた石垣島では、20軒の歯科医院のうち9軒が65歳から75歳の医師によるもの。あと5年もすれば、医院数が半減してもおかしくない状況です。
こうした未来を見据え、現場の担い手となる歯科衛生士を私たち自身で育てる必要があると考え、養成学校の設立に踏み切りました。単に人手を補うのではなく、これからの歯科医療を地域で支える人材を、自分たちの手でしっかりと育成していく。そのための第一歩です。
― Excelやスプレッドシートでの管理ではなく、いきなりZoho CRM を導入されたとのことですが、CRMという考え方にはどのような経緯でたどり着かれたのでしょうか?
八丁氏:近年、歯科業界でもCRMという言葉が注目され始めており、セミナーなども増えています。ただ、実際には予約システムに付随した“CRM風”の仕組みが多く、本格的な活用はまだ少数です。
当法人では、全国でも珍しい「フルリモート型の歯科衛生士養成学校」を立ち上げたく、場所に縛られず学生の情報を一元管理できる仕組みが必要でした。その点、Zoho CRM は、入学から卒業後のキャリア支援までを継続的に管理できるため、非常に適していたと感じています。今後ますます重要になる業務効率化の観点からも、最初からCRMを選択したのは正解だったと思います。
― Zoho CRM を導入された背景について教えてください。
八丁氏:今回、私たちがZoho CRM を導入した理由は、新たに開校した歯科衛生士養成学校における顧客(=学生)情報管理を行いたかったからです。在学中の授業の出席や成績管理はもとより、卒業・就職後の進路やキャリアの歩みまで、すべての情報を一元的に管理し、長期的に学生をサポートしていける仕組みをCRM/SFAにより構築したいと考えました。
この構想を実現するにあたって、同校の立ち上げ当初から支援をいただいている導入パートナーの株式会社etikaさんから提案されたのが、Zoho CRM でした。私たちが求めていたのは、単なる在学中の出欠管理や成績管理にとどまらず、卒業後の職場やキャリアアップ状況なども継続してフォローできる柔軟なシステムです。
また、生成AIの登場前夜から検討を始めたこのプロジェクトは、今後のAIや外部ツールとの連携、API活用といった「拡張性」も大きなポイントでした。その意味でも、自由度が高く、カスタマイズ性に優れたZoho CRM は非常に理想的な選択肢だったと感じています。
私たちにとって学生は、ただの「在校生」ではなく、卒業後も接点が続いていく“クライアント”のような存在です。教育機関における顧客管理――つまり、長期的な関係構築を支える仕組みとして、Zoho CRM はまさに最適なツールだったと実感しています。
― ここからは実際のZoho CRM の画面を見せていただきながら、実際の活用方法について教えてください。まず、タブについてはどのような分け方をされていますか?
向井氏:現在、私たちが運用している Zoho CRM では、業務内容に応じてさまざまなタブを設けています。例えば、入学前の段階にあたる学生候補者については「見込み学生」タブで管理し、入学後は「学生情報」タブに切り替えて在学中の状況を追いかけるようにしています。
そのほかにも、学校運営に必要な情報を網羅するために、「請求・決済状況」「成績・出席管理」「各種申請・届け出」「資料請求・オープンキャンパス申請履歴」といったタブを設け、関連する情報をタブ間で連携させながら、一元的に管理できるようにしています。

また、カリキュラム管理に関しては、「科目」タブで科目情報を、「履修」タブで学生ごとの履修状況を把握しています。運用を進める中で、新たに必要になった管理項目、例えば「駐車場の利用管理」などについても、随時タブを追加しながら柔軟に対応しています。
こうした構成により、学務に関わるあらゆる情報を Zoho CRM 上に集約し、効率的な事務運営とデータの整合性確保を実現しています。

出欠、各種申請、その情報管理まで。すべてがつながるCRM×教育の新しいかたち
― 生徒が自分で入力することで、学校側の負担を上手に軽減されていらっしゃいますね。
八丁氏:はい、まさにその通りです。例えば、学生からの「成績証明書の発行」など、学事に関する各種申請をZoho CRM 経由で自動化することで、バックオフィスの負担を大きく軽減できています。
また、現在多くの歯科衛生士学校が経営的にも人材面でも厳しい状況に直面しており、特に教員や事務職員の高齢化、疲弊が進んでいます。従来のように紙やExcelで何でも処理するやり方には、限界が来ていると感じています。
だからこそ、私たち永孝会が先行してCRMを活用し、業務の根本的な見直しと効率化を図る必要があると考えました。この取り組みが他の歯科衛生士学校にとってもモデルケースとなり、業界全体のDXを進めるきっかけになればと願っています。
― 方、教員をはじめとする運営サイドでは、どのような使い方をされているのでしょう?
向井氏:教員もZoho CRM に日常的にアクセスし、必要な情報の確認や入力を行っています。例えば、学生の出席登録は基本的に学生ポータル側から行われますが、万が一、出席漏れや登録ミスが発生した場合は、教員側で修正・登録を行います。出席の方法(対面・リモート・オンデマンドなど)もプルダウン形式で簡単に選択でき、表記揺れも起きにくくなっているため、ITに不慣れな教員でも安心して操作できます。
教員が主に利用するのは、「成績・出席管理」タブと「出席コードの生成」タブの2つです。例えば、授業ごとの出席状況は自動的に反映され、学生がポータルから「出席」ボタンを押すと、それがCRM側にリアルタイムで取り込まれます。その後、教員は必要に応じて個別の学生情報を確認・修正したり、特定の科目や回ごとの出席状況を絞り込んで確認することも可能です。
また、これらのデータはすべて履歴として保存されており、「この学生は第1回と第3回は出席、第2回は欠席」といった情報も簡単に把握できます。さらに、出席簿のカスタマイズも行っており、必要に応じてExcel形式で出力し、紙ベースの提出にも対応できるようにしています。
こうした機能によって、教員の業務負担を軽減しつつ、正確な学生管理を実現しています。学校全体でZoho CRM を共通の基盤として活用しているからこそ、教務・学務が連携しやすく、運営のスピードも格段に上がったと感じています。

最小限の手間で最高の学校運営を――Zoho CRM で描く歯科医療教育の新基準
― 今回、貴院では新事業の立ち上げに際して新たにZoho CRM を導入されましたが、手ごたえは感じていらっしゃいますか?
八丁氏:はい。私たちは今回、既存の仕組みを置き換えるリプレイスではなく、歯科衛生士養成学校という新たな教育事業の立ち上げにあたって、最初からZoho CRM を導入しました。そのため、ビフォーアフターでの明確な数字を出すのは難しいのですが、それでも通常の学校運営における学生管理業務の手間は、体感的に50%以上削減でていると感じています。
例えば、学生のステータス情報については、初期入力を学生自身がポータルを通じて行うため、こちらでの手入力作業が大きく減りました。授業の出欠も自動集計されていますし、成績管理についても基本的にはCRM上で集約・可視化が可能です。いわば、“手をかけなくてもデータベースが育っていく”感覚ですね。
当校のように小規模な学科(定員34名)でもこの効果ですから、数百名規模の学校や、学部・学科が複数ある大学などであれば、さらに大きな業務効率化が実現できるはずです。今後の展開次第では、教育機関全体の運営スタイルを根本から変える可能性すら感じています。Zoho CRM を導入したことで、単なる“業務の見える化”を超えた、運営の質そのものの変化が始まっている実感があります。

2025年の開校と同時に、学生情報のすべてをZoho CRM で一元管理。入学前の問い合わせから、在学中の履修・出席・申請、そして卒業後のキャリア支援まであらゆる局面をZoho CRM 上でつなぎ、“学務DX”を実現している。
教員や事務員が困らないようにマニュアルを整備しています。画面がシンプルでわかりやすいため、マニュアルも数ページで完結する点もいいですね。

― Zoho CRM やZoho ツールを活用した、今後の展望をお聞かせください。
八丁氏:当法人としては、まず歯科衛生士学校の運営におけるZoho CRM の活用をさらに発展させていきたいと考えています。すでに、卒業後のキャリア管理を見据えた仕組みも設計しており、今後は就職支援や継続教育といったフェーズにも広げていくつもりです。また、当法人が関与する学校だけでなく、他行との連携や支援にも力を入れていきたいと思っています。
日本では今、歯科衛生士の人材不足が深刻で、このままでは歯科医療全体の持続性が危ぶまれかねません。私たちがZoho CRM を活用して実現している業務効率化や人材管理の仕組みは、その解決に向けた一つのモデルになり得ると考えています。実際に、他校からの相談や連携の打診も増えてきており、今後はそうした現場にも当法人の知見を共有し、業界全体の底上げに貢献していくことが目標です。
Zoho CRM は単なる業務ツールではなく、歯科医療界にとっての“持続可能性のためのインフラ”になり得ると感じています。この先も、より良い医療教育と人材育成の実現に向けて、Zoho ツール とともに歩んでいたいですね。
― 今回Zoho CRM の導入をサポートした株式会社etikaへの評価をお聞かせください。
八丁氏:株式会社etikaの宮村さんには、当法人のDX推進全般において、まさに「顧問」のような立場で伴走いただいています。今回の歯科衛生士養成学校の立ち上げにあたっても、当初から構想の壁打ち相手として相談に乗っていただき、CRMの導入から実装まで手厚くサポートしてくださいました。こちらの要望に対して、まるで魔法のように解決策を見つけて実現してくださる姿勢は、まさにプロフェッショナルそのものです。
「人手をかけずに、学生の入学から卒業、さらにその後のキャリアまでを一貫して支援する」。そんな構想が、今こうして具体的な形になりつつあるのも、etikaさんの力によるところが大きいと感じています。Zoho CRM を最大限に活かしたこの取り組みが、今後の教育現場に新たなスタンダードを築く一歩になることを期待しています。

医療法人永孝会
- 所在地:山口県下関市伊倉新町3-1-1 ゆめシティ2
- 業種:医療・福祉(歯科診療・保育事業)
- 社員数:65名
- 事業内容:歯科診療業務、企業主導型保育事業、歯科衛生士養成学校の運営
- ビジネス:BtoC
- 創業:2009年12月
- URL :https://www.eikokai-orange.com/
導入支援パートナーについて
株式会社etika
Zoho CRM のカスタマイズはもちろん、他のZoho アプリ及び各種SaaSとのAPI連携によってお客様に最適なMA・CRM・販売管理システムを構築します。Zoho CRM の基本設定では満たせないカスタマイズも、過去のカスタマイズ経験と関数及びDelugeによって解決を目指します。
当社はオンライン及びチャットにて東京等の関東地方と中国九州地方を始めとして全国のクライアントを支援しています。
- 本社所在地:〒750-0003 山口県下関市阿弥陀寺町7-8
- 設立:2019年7月
- 従業員数: 3名
- 業種:ITサービス・コンサルティング
- パートナー認定: 認定パートナー
- ビデオ会議対応: 可
- 対応地域: 全国
- 対応サービス: 全サービス
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