CRM/SFA 導入事例属人化の解消、営業技術・情報の伝承、そしてグローバルな営業力強化へ——
製造業の現場を支える Zoho CRM の真価とは
- オイレス工業株式会社
- 所在地〒252-0811 神奈川県藤沢市桐原町8番地
- 業種機械メーカー(産業機械・機械要素・構造・建築機器分野)
- 社員数単体従業員数 1,107名 / 連結従業員数 2,577名
- ビジネスBtoB
- 創業1952年(昭和27年)3月11日
製造業における営業活動は、単なる案件管理にとどまりません。顧客との長期的な関係構築、技術提案や試作、量産までのプロセス管理、さらには納期や規制対応といった細やかなフォローまで求められる、極めて複雑な業務です。そうした中、Excelでの管理に限界を感じていたオイレス工業株式会社の自動車軸受事業部では、2025年から本格的に Zoho CRM を導入。国内外の営業拠点をつなぎ、案件の可視化・情報の一元管理・売上予測まで、幅広い用途で活用を進めています。
導入初期ながらも、「営業メンバーの数字への意識が変わった」「他拠点の動きが見えるようになった」「引き継ぎが驚くほどスムーズになった」といった声が次々にあがっており、CRM の導入効果を早くも実感していると言います。また、自動通知機能による納期管理の徹底や、Zoho Analytics を活用した個人目標の可視化など、運用は次のフェーズへと進化中です。
本事例では、導入前の課題、選定の背景、導入後に見えてきた効果や今後の展望について、実際にプロジェクトを推進した自動車軸受事業部 営業部 課長の奥山洋氏と、Zoho CRM を利用されている自動車軸受事業部 営業部の井川瑶子氏、富所 華氏にお話を伺いました。
「営業メンバーの間に数字を意識する文化が根付きはじめ、前向きな意識変化が起きていると感じます。」
オイレス工業株式会社 自動車軸受事業部 営業部門 課長奥山 洋氏
― オイレス工業株式会社について教えてください。
奥山氏: 当社は、1939年に「日本オイルレスベアリング研究所」としてスタートし、1952年に株式会社として設立されました。私たちは、無給油ですべり軸受が機能する「オイルレスベアリング」のパイオニアで、産業機械や自動車など幅広い分野で採用いただいています。
事業は主に3つありまして、1つ目が軸受機器事業。こちらが当社の主力で、ベアリングといっても油がいらないタイプなので、環境に優しく、メンテナンス負荷も少ないのが特長です。2つ目が構造機器。これは免震や制震装置で、地震から建物や人を守るための技術。3つ目が建築機器で、自然の風や光を活かした省エネ・快適性を追求する製品を扱っています。
私たちは技術開発にも力を入れており、現在までにあわせて3,500件以上の特許を保有しています。独立系メーカーとして柔軟性のある提案ができるのも特徴で、国内外のさまざまなお客様とお取引をさせていただいています。
Excel管理に限界を感じ、機能・連携性・サポート体制からZoho CRM を選択
― CRM を導入する前は、Excelを利用されていたそうですが、CRM 導入のきっかけと当時の課題を教えて下さい。
奥山氏: 自動車軸受事業部では以前からExcelで顧客・案件管理を行っていたのですが、Excelファイルがあちこちに散在していて、うまく共有もされていませんでした。過去のデータも蓄積されず、属人化が進んでいて、引き継ぎ時にも苦労していました。
2022年には一度「まずはExcelを改良してみよう」と取り組み、一時的には改善もしましたが、半年ほどで限界を痛感しました。というのも、共有性、日本語と英語を併記する手間や見にくさ、データ容量の重さなど、多くの課題があらためて浮き彫りになったからです。
決定的だったのは、活動や経緯を一元管理できないことでした。案件の引合いから受注までのプロセスが可視化されておらず、いつ、誰が、何をしていたかといった履歴が残せていない。これでは戦略的な営業活動ができません。そのうえ、各拠点の数字は月に1度共有していただけだったので、現場の状況をタイムリーに把握するのは困難でした。
そんな背景から、上層部から「CRMを推進する旨」のGOサインが出て、本格的なツール選定が始まりました。普段の業務と並行しての作業は大変でしたが、新しい仕組みを自分の手で作れるのは、何より楽しかったですね。
井川氏: 正直なところ、今の Zoho CRM が便利すぎて、導入前の状況を思い出すのが難しいくらいです(笑)。Excelを使っていた当時は、顧客情報や売上状況を一元的に確認できず、欲しい情報にたどり着くまでに時間もかかりましたし、見づらさもあって営業活動に支障が出ることもありました。
― 複数の CRM を検討した結果、Zoho CRM を選んだ決め手は何でしたか?
奥山氏: 導入検討を始めたのは2023年6月頃で、「予算よりも、しっかりと成果につながるシステムを導入しよう」という方針のもと、Salesforce、kintone、Pipedrive、eセールスマネージャー、HubSpot、Mazrica Salesなど複数の CRM を比較しました。
最終候補に残ったのはSalesforce、Pipedrive、kintone、Zoho CRM の4つでした。他部門での過去のシステム導入失敗の経緯から、スモールスタートできる製品で進めようということになり、初期投資が高額なSalesforceは検討からはずすことになりました。kintoneも CRM と営業管理ツールとしてみた場合、機能不足を感じ除外しました。
最終的にPipedriveと Zoho CRM の2つが残りました。Zoho CRM は CRM 以外のアプリとの連携や、Zoho Analytics による幅広いデータ活用の可能性、そして何より日本語でのサポート体制の安心感がありました。価格も含めて、トータルで弊社のニーズに最もフィットしていたのが Zoho CRM でした。
案件管理から売上予測まで、製造業に特化した運用フローを構築
― Zoho CRM を国内外の複数拠点でご利用されていますが、業務でどのように活用されていますか?
奥山氏: 現在、Zoho CRM は、国内外の自動車軸受の営業部門で使用しています。国内は、宇都宮、東京、浜松、豊田、大阪、広島、海外は中国、アメリカ、タイ、インド、ドイツです。2024年4月に国内と中国でトライアルを行い、同7月には、アメリカとタイ、インド、ドイツに展開しました。本稼働は2025年からです。
当社では Zoho CRM を、案件管理や売上予測の精度向上に向けたコアシステムとして活用しています。見込みから引合い、量産中の案件まで、製造業ならではのステージを想定した3段階のパイプラインを構築し、かんばん表示を使って、ステージごとの進捗を視覚的に把握できるようにしました。
たとえば、見込み案件段階では、まだ引合いがないものの、戦略的にアプローチすべき顧客を登録しておきます。その後、実際に引合いを獲得すると、「引合い案件管理」へとステージが移行します。設計提案・試作・仕様決定などのプロセスを経て、量産が決定されると「量産中案件管理」に移ります。こうした一連の流れを CRM 上で一貫して管理できる点は、Excelでは実現できなかった大きなメリットです。
スクリーンショットのキャプション:パイプラインは3つのステージで管理。案件状況の表示にはかんばんビューを使用。※顧客名や案件名が特定出来ない様に変更した。
また、「月次進捗管理」という独自タブを設け、月末に各案件の進捗をまとめたレポートを作成しています。レポートには、案件ごとの次のアクションやこれまでの活動履歴が記録されています。これは、営業プロセスを明確化して受注確立を向上させるのが目的です。
スクリーンショットのキャプション:月次進捗管理タブで作成したレポート。必要に応じてExcelやPDFにエクスポートもできる。※特的出来ないサンプル仕様へ変更
― 売上予測にも Zoho CRM を活用されているとお聞きしました。
奥山氏: 私の担当部署では売上予測にも力を入れていて、2030年くらいまでの中長期的な予測を行う「中長期年度別売上予測」、契約時の数量をトラッキングする「受注時基準数量」に加えて、「月別予算管理」、「量産流動実績」という4つのタブを用意しています。こうしたタブ管理によって、ログの保存や予算・実績管理がしやすくなります。
売上予測のためのタブ一覧
- 中長期年度別売上予測タブ(実装済)2030年までの売上予測を年次単位で管理し、長期的な計画策定に活用。
- 受注時基準数量タブ(実装済):量産決定時の契約数量を記録し、後の実績や内示との比較する。
- 月別予算管理タブ(準備中):年間の月別予算と売上を管理予定。
- 量産流動実績タブ(準備中):SAPと連携し、実際の月次売上・数量実績を蓄積・分析予定。
さらに、Zoho Analytics を個人の目標管理や予実の分析などに利用しています。今後は売上予測関連のデータを Zoho Analytics に移行し、より高度なデータ活用を進めていく方針です。
スクリーンショットのキャプション:予実の管理に Zoho Analytics を活用。
導入初期から「業務効率化・意識変化・属人化の解消」を実感
― Zoho CRM の本稼働からほぼ半年です。実感されている効果はありますか?
奥山氏: Zoho CRM を本格的に運用し始めたのは、海外が2025年1月から、国内は同年4月からと、まだ導入初期の段階ですが、すでにいくつかの効果を実感しています。たとえば、数値目標の管理を取り入れたことで、営業メンバーの間に数字を意識する文化が根付きはじめ、前向きな意識変化が起きていると感じます。
また、これまではマンスリーベースでしか情報を共有できなかったのですが、今では Zoho CRM 上でいつでも最新の情報にアクセスできるようになりました。Zoho Analytics で分析レポートも容易に作成できるので、必要なときにすぐ確認ができ、フォローアップの質もスピードも上がったと思います。
さらに、CRM で情報が一元管理されているため、誰が見ても過去の対応履歴や商談状況がすぐに確認できるので、属人化の解消にもつながっています。これからさらに活用が進めば、より大きな成果が期待できそうです。
言語については、基本は英語と日本語で、それに辞書登録も活用していて、グローバルでうまく運用できています。
井川氏:私は Zoho CRM の導入前後の両方を経験しているのですが、一番大きな変化は「引き継ぎのしやすさ」だと感じています。4月に異動があった際、私が担当していたお客様の情報を事前に CRM 上に整理しておくことで、後任者にスムーズに引き継げました。過去の営業活動や売上状況もすぐに確認でき、これまでのようにメールやバラバラのExcelファイルを探す手間がなくなったのは本当に助かっています。
CRM 上では拠点別に状況を確認できるため、他営業所の動きも把握しやすくなりました。「この顧客は誰が担当しているのか」もすぐにわかります。
また、個人のタスク管理にも Zoho CRM は非常に便利で、日々の活動を記録しておけば、上司への報告も簡単に一覧で出力できます。検索性も高く、欲しい情報にすぐアクセスできるので、業務効率が大きく向上したと感じています。
富所氏: Zoho CRM を使い始めて感じた大きな利便性のひとつが、自動通知機能です。Excelには通知機能がありませんし、Outlookのメール通知だけでは不十分でした。しかし Zoho CRM では、事前に設定したタイミングで自動的に通知が届くため、タスクの抜けや遅れを防げています。
自動車業界では納期遵守が最重要ですし、環境規制関連の提出書類や社内提出物など、時期によって業務が一気に集中します。そうした中で、何をいつまでに対応すべきかを CRM が自動で教えてくれるのは、本当に心強いです。忘れずにきちんとフォローできるという安心感は、現場にとって非常に大きな価値ですね。
データを活用し、引合いの最大化と受注率向上へ
― 今後の CRM の活用構想について教えてください。
奥山氏: CRM を導入した最大の目的は、システム内に蓄積される情報を活用して引合い件数を増やし、受注率を高めることでした。そのために、フォローアップの状況や活動の成果を数値で「見える化」し、営業一人ひとりの動きを可視化できるようにしました。今後は、できている人・できていない人の差を把握し、全体の底上げにつなげたいと考えています。
個人的には、私はドイツやインドの支援を担当しているので、CRM のデータをもとに各拠点にタイムリーなサポートを行って引合い件数を増やしてきたいです。
また、2025年1月から、「失注理由」の入力を必須項目にしました。これにより、今年の年末にはある程度のデータが蓄積され、失注の傾向を分析できると考えています。失注理由を明確にすることで、事前の対策や改善点を検討する材料になりますし、上層部への報告や判断にも活用できると期待しています。
CRM を単なる記録で終わらせず、次の受注につなげるための分析ツールとして活用していきたいと考えています。
スクリーンショットのキャプション:製品系統別の失注傾向が見やすく整理されている。
定量的な成果としての「効率化」や「売上増加」は、まだこれから本格的に見えてくるフェーズではありますが、今後しっかりと数字で示していきたいと考えています。
また、現在は既存顧客からの売上拡大を中心に取り組みながらも、新規顧客開拓にも着手しています。自動車メーカー各社の調達先を調査し、どのような軸受製品が使われているかを分析しながら、当社製品のシェア拡大につなげていく戦略を進めているところです。この活動にも CRM は不可欠です。
― 導入支援パートナーの対応について、率直なご感想・評価をお聞かせください。
奥山氏: 導入パートナーのZooops Japan (ズープスジャパン)には、本当に100点満点の対応をしていただいています。私自身が主にやり取りをしているのですが、レスポンスも非常に早く、こちらの意図をしっかりと汲み取ってすぐに形にしてくれる点がとてもありがたいです。
私はITの専門家ではないので、「こういうことがしたい」と大まかに伝えることが多いのですが、それでもすぐにイメージを理解して、具体的な形に落とし込んでくれます。その理解力と対応力がとても心強いです。
また、各拠点で個別に入力した案件情報を、売上予測に一括で反映させたいという相談をした際には、こちらが想定していなかったキオスク機能*の活用を提案していただきました。これを実際に組み込むことで運用もしやすくなり、本当に頼れるパートナーだと感じています。
*キオスク機能とは、特定の処理を行うための専用画面をノーコードで作成する機能です。
― Zoho CRM の導入を検討されている方へメッセージをお願いします。
奥山氏: 私たちのように、長年Excelで顧客管理や案件管理をしてきた製造業、“伝統的だがデジタル化に課題を抱えている日本企業”には、Zoho CRM のようなシステムをおすすめしたいです。導入当初は現場にも戸惑いがあるかもしれませんが、実際に使い始めるとExcelよりも圧倒的に便利だと感じる社員が多く、仕事へのモチベーションにもつながっています。
アドバイスとしては、最初から大人数で構築に関わるのではなく、少数精鋭でスモールスタートするのが成功のカギだと思います。あまり最初から多機能にしすぎたり、他システムと連携させたりすると運用が追いつかなくなるケースもあるので、まずはシンプルに始めて、必要に応じて拡張していくやり方がおすすめです。
オイレス工業株式会社
- 所在地:本店/藤沢本社:〒252-0811 神奈川県藤沢市桐原町8番地
東京本社 : 〒141-0001 東京都品川区北品川6-7-29 ガーデンシティ品川御殿山 - 業種:機械メーカー(産業機械・機械要素・構造・建築機器分野)
- 社員数:単体従業員数 1,107名 / 連結従業員数 2,577名
- ビジネス:BtoB
- 事業内容:軸受機器(オイルレスベアリング)、構造機器(免震・制震装置)、建築機器、自動車・産業機器向け部品の製造販売ほか
- 創業:1952年(昭和27年)3月11日
- URL :https://www.oiles.co.jp/
導入支援パートナーについて
株式会社Zooops Japan
Zooops Japan -ズープスジャパン- は、Zohoアプリケーションの販売・カスタマイズを行う認定パートナーであり、2021年2月には国内で初めてZoho Creator Certified Developer を取得しました。
私たちは、Zohoアプリケーション単体のカスタマイズだけでなく、様々な他システムとZohoアプリケーションを連携することで、より効率よくスピーディに生産性の高いシステムを作り上げることができると考えています。
これまでZoho CRM を中心に、連携実績のある他システムは、基幹システム、モバイルメッセンジャーアプリケーション、POSレジシステム、会計システム、クラウドPBXツール 等、多岐にわたります。
これまでの多様な実積から得た「ヒアリング力」「課題解決力」「ノウハウ」と、弊社の強みである「技術力」を最大限活かし、お客様の課題整理から運用サポートまで、ありとあらゆるビジネスシーンをワンストップでサポート致します。
- 本社所在地:東京都千代田区神田和泉町1-12-15 O・Sビル4F
- 設立:2007年
- 従業員数:47名
- 業種:コンサルティング
- パートナー認定:ビシネスソリューション、システムソリューション、クラウドソリューション
- パートナー認定:アドバンスパートナー
- ビデオ会議対応:可
- 対応地域:全国
- 対応サービス:CRM、CRM Plus 、One 等
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