CRM/SFA 導入事例既存サービスではできなかった顧客情報管理と業務効率化を実現。
顧客データを活用したファンマーケティングでリピート需要の掘り起こしに成功。

― はじめに、御社の事業について教えてください。

納谷氏：当社は、石川県加賀市にあるテーマパーク『月うさぎの里』の運営を中心としたレジャー事業と、福井県あわら市にある愛犬と一緒に泊まれる宿『月香』の運営を中心とした旅館事業の二つを軸に事業を展開しています。
『月うさぎの里』は、石川県加賀市にあり、うさぎとふれあうことができるレジャー施設です。家族で楽しめる体験型テーマパークとして、広場に放し飼いにされているたくさんのうさぎと直にふれあえるほか、うさぎをモチーフにした起き上がりこぼし作りやパイづくりをはじめとするさまざまなワークショップを体験していただけます。

一方『月香』は、ゲストが愛犬と一緒に宿泊できる温泉旅館です。愛犬と宿泊できる宿泊施設は日本全国にいくつもありますが、北陸では当館が最初です。大浴場を除くすべてのスペースでワンちゃんと一緒に過ごせる愛犬を第一に考えた設備と、動物好きのスタッフによるホスピタリティが最大の特長で、関西・北陸地方を中心とした多くのお客様からご愛顧いただいています。

― Zoho CRMの導入に至った経緯を教えてください。

納谷氏：きっかけは集客の強化を目指したWebサイトの改修でした。旅館業界ではその集客を楽天やヤフー、じゃらんといった大手の旅行予約プラットフォームに依存していますが、当館ではすでに50％ほど自社で集客できていました。自社集客によるお客様をもう少し増やしていきたいという思いがありました。

それに加え、当館でこれまで活用していた「予約管理システム」の更新も迫っていました。この「予約管理システム」は楽天、Yahoo!トラベル、じゃらんなどの大手旅行予約プラットフォームからの予約情報も併せて管理することができるシステムです。大変便利なシステムですが、これらのプラットフォームでは大切なペットの情報を登録することができないため、チェックイン時にお客様に手書きで宿泊票へご記入いただく必要がありました。

さらに、「予約管理システム」では愛犬の情報を細かく管理することが難しく、例えば「ワンちゃんのお誕生日月に特別なご宿泊プランをご案内する」といった個別のご提案も手間がかかる状況でした。これらの属人的なオペレーションを改善し、業務効率化を図ると同時に、より積極的なマーケティング施策を展開するためにも、Webサイトの改修に加えシステムの見直しが必要だという結論になりました。

― Zoho以外にシステムのご検討などはされていましたか。

納谷氏：いえ、特にはしていませんでした。導入を支援してくださったONiWAさんとは、Webサイトの改修や広告運用を依頼しているWebマーケティング会社からのご紹介がきっかけです。ONiWAさんからは、さきほどのような弊社の課題に対して解決策を提示していただけたので、一度やってみようと。導入後の現在も、データを活用したメールマーケティングなどでご支援いただいています。

ONiWA稲葉氏：弊社としては、はじめに納谷様や月香のスタッフの皆様から細かなご要望を伺った上でシステムの要件を定義しました。結論として、現状の「予約管理システム」はそのまま残し、「予約管理システム」のデータをZoho CRMに取り込み顧客情報管理はZoho CRMをベースに行うという形にしました。

運用開始後は、業務での使用中に生じた疑問点や課題にオンデマンドで対応する形でサポートを続けています。現在では、以前「予約管理システム」では対応が難しかった入湯税の管理も Zoho CRM で行えるようになり、チェックイン時に手書きで記入していただいていた情報の大半がシステム上で処理可能になりました。一方で、月香さんならではのお客様とのコミュニケーションの在り方も意識して、デジタル化しなかった部分もあります。

納谷氏：当旅館ではかねてより接客やお客様とのコミュニケーションを大切にしてきました。例えば、お客様へのお礼のお手紙は担当したスタッフが手書きしたり、お客様自身にも手書きでアンケートを書いていただいたりと、温度感のあるやりとりを重ねてきたので、そこは残しておきたかったですね。

ONiWA稲葉氏：私自身も、何もかもデジタル化しスマートにするのが正解ではないと考えていますから、納谷様のお話を伺う中で “残すべき部分”を考えながら提案させていただきました。

― Zoho CRM とZoho Campaigns と連携して、メールマガジンも配信されているそうですね。

ONiWA稲葉氏：Zoho CRM の導入により顧客情報が一元化され、可視化されることで、さまざまな傾向が浮かび上がってきています。たとえば、お客様が連れてくる犬種ではトイプードルが圧倒的に多いことがわかり、新たな広告ビジュアルにトイプードルを採用するなど、マーケティング施策に反映しています。
また、CRMに集積した顧客情報をベースにしたメールマガジンの配信も始めたところ、一般的にいわれるメール開封率と比較すると、とても高い開封率であることがわかりました。昨年のクリスマスに送ったメールからは、計13組のお客様が予約され、合計140万円の売上に繋がったという成果も出ています。

一方で、納谷様から愛犬とお別れしたためメールマガジンの配信停止依頼を電話してくださるお客様がいらっしゃったことを伺いました。そのニュース自体は非常に残念なことですが、見方を変えると、月香さんとお客様との関係性の良さが伺えます。開封率の高さは宿泊時のホスピタリティの高さからくるものなのだと感じました。

納谷氏：当館では2017年3月に開業し、現在（2024年）で足かけ７年営業していますが、メールマガジンなどの施策はそうした開業当初のお客様を優先的にお送りしている状況です。そんな中で、最近感じているのがリピーターの多さ。特に２～3年前に1回来られたお客様からの反応が良好です。
先日も、「ワンちゃん一匹無料！」というオファーを付けてご案内を送ったところ、大変大きな反響をいただきました。もちろん、北陸新幹線の敦賀延長という追い風も大きいかと思いますが、Zohoを導入したことで肌感覚でしか見えていなかった施策の成果が、具体的な数値となってわかるのは嬉しいですね。

― メールマガジン以外にもZoho CRMを使われて良かったと感じられたことはありますか？

納谷氏：便利だなと思うのは、Zoho Socialですね。現在、Instagramで宿泊されたワンちゃんを写真で紹介するなどさまざまな情報を定期的に発信しています。SNSの運用はスタッフが行っていますが、Zoho Socialを活用することでInstagramの予約投稿ができるようになったため効率化したと喜んでいました。
ただ、SNSなども使いながらお客様にお伝えしたい情報はたくさんあるのですが、それらを伝え切れていないのが現状です。これまで以上にメールマガジンを定期的に配信していく仕組みを急いで作り上げたいと思います。

ONiWA稲葉氏：メールマガジンでは、想像していたよりもはるかに大きな反響をいただきました。ということは、これをより細かくセグメントして送ったらどうなるのか？などいろいろ試してみたいビジョンがたくさん浮かんでいます。そのあたりを納谷様と相談しながら仕組化していきたいですね。

納谷氏：実のところ私自身は経営者ということもあり、なかなか満足に使いきれていません。現状は、Zoho CRM が持つ多種多様な機能のほんの一部しか使いこなせてないと思うともったいないですね。
ただ、今回、稲葉さんのサポートにより、当館の最適な機能を実装していただいているので、今後はZoho CRM で蓄積した顧客情報をいかに「集客」に繋げるかがテーマになってくると思います。

― 最後に、今後の展望について教えてください。

納谷氏：当館のように愛犬と泊まれる宿泊施設は数多くあるものの、一方でこうしたペット同伴型ホテルに特化したシステムはありません。ニッチなニーズかもしれませんが、「ないものを作れる」Zohoはとても魅力的です。

今後は、『月香』の顧客情報を活用した集客の強化はもちろんですが、冒頭でご紹介した『月うさぎの里』の方もシステムが老朽化しており、そちらのシステムもZohoへリプレイスを進めているところです。
あちらは旅館ではなく体験型テーマパークなので、オペレーションは全く異なるとは思いますが、Zohoをうまく活用することで業務効率化やマーケティング面での強化を図れればといいなと期待しています。